“材料”の魅力について

 このブログは、金属材料を専門とするメーカー研究者が、専門分野の話からその他関係のない話まで、日常的なアウトプットを目的として開設しています。

 大学受験用の物理の参考書に、「物理のエッセンス」というものがあり、私の学生時代だけでなく、今でも名著として愛用されているようです。その「物理のエッセンス」のコンセプトは、『1・2 & 8・9・10』というものです。一見すると???ですが、要するに一般的な教科書は理解に必要不可欠であるものの非常に初歩的な、レベルでいうところの1や2の話が抜けていて、さらに深い理解を促す8~10のレベルの話も抜けており、それを補う位置づけの参考書というコンセプトになっているようです。

 そして大学の教科書や専門書を開いてみても、1や2のレベルの話が書いていないから故に、理解ができない・理解しようとする気もなくなるという事が少なくないような気がしています。このブログでは、数ある材料の分野の名著を紹介しつつ、その教科書に敵うはずもないながら、紙面の都合で省略せざるを得なかったであろう『1や2のレベルの話』を、私の個人的な解釈としてご紹介したいと思います。8~10の話は私ができるはずもない話です。

 

 最後に、私が金属材料を学びたいと思ったきっかけ(修論の謝辞より抜粋)をご紹介したいと思います。

 ”私が金属材料を学びたいと思ったきっかけは,小学校5年生の頃の愛知県の地誌の授業にある.愛知県は日本の航空機産業の中心であり,そしてその航空機が空を飛ぶ事を可能にしたのは,ジュラルミンという“軽くて強い”金属材料の開発に依るものであると習った.その教科書の片隅の一記述にとても感動し,その教科書のページが今でも脳裏に焼き付いている.ジュラルミンの開発は,重量と強度というトレードオフの関係を脱す,革新的な技術であり,社会の豊かさを根底から人知れず支えており,その無骨とも思える金属材料がもの凄く格好よく感じた.何とも深甚で謙虚なその学問的立場に日本人的な奥ゆかしさにも通ずる精神を感じた.” 

 現在、日本の製造業の国際的な競争力は凄まじいスピードで低下しています。そんな中で、現在でもなお高い競争力と研究開発力を保っている分野の一つが金属材料を含む素材の分野です。私が一生の間で携わる研究成果は非常に過小なものでしかありません。しかしながら、このブログを通して、私がジュラルミンに感じた大きな感動を次代の人に届けることが出来たならば、それは非常に名誉なことであり、人生における大きな成果だと思っています。

 それでは、よろしくお願いします。

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